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奉 祝
新帝ご即位『令和』改元
新元号〈令和〉の元とも言える「令月」という言葉は、<何事をするにもよい月>、<めでたい月> などの意味を持つ言葉として、古くから頻繁に用いられてきました。
『万葉集』(8世紀後半に成立)の家人・大伴旅人が連作の歌の序文に記した
初春令月 氣淑風和 梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香
が、令和の出典とされています。
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『万葉集』国会図書館デジタルコレクションより
『万葉集』巻五 梅花謌卅二首并序
(原文)于時、初春令月、氣淑風和、梅披鏡前之粉、蘭薫珮後之香。
しかし、実はこの序文、万葉集をさかのぼること100年前には既にその注釈書が刊行されていた
中国の詩集「文選」所収の 於是 仲春令月 時和気清 を下敷きにしたものである事は、日本文学の世界では常識です。
当時の知識人たちにとって「詩歌管絃」は必須の教養。ここでいう「詩」とは、すなわち漢詩を指します。
つまり彼らは漢詩・漢文を自由に操り、日記も漢文(中国語)で記していたのです。
そして現代の小学生が掛け算九九を暗記しているのと同様に、彼らは百年前の「文選」に出てくる文章は、諳んじていたのです。
さて、話を戻しましょう。
以上に見て来たように、文選や万葉集で多用される「令月」という言葉は、漢詩とともに中国から流入した言葉であり、特に私達、雅楽家にとっては代表的な朗詠の中で歌われる、非常に身近な<おめでたい言葉>なのです。
雅楽には<令月>を歌う朗詠があります
「嘉辰令月」
『万葉集』の成立(759-780年頃)から遡ること約100年、中国の文人が読んだ漢詩が、
雅楽<朗詠>として今も歌い継がれています。

『和漢朗詠集』国会図書館デジタルコレクションより
雅楽の声楽「朗詠」(ろうえい)の楽曲の中に今も歌い継がれている『嘉辰』
藤原公任によって撰定された『和漢朗詠集』(1018年頃)にも<祝>の部に記されています。
<嘉辰>
嘉辰令月歓無極万歳千秋楽未央 謝偃
かしんれいげつ かんむきょく ばんぜいせんんしゅう らくびおう
(歌意)めでたい日 めでたい月に 歓びは尽きることはない
謝偃(しゃえん 生年不詳 - 643年)は隋から初唐にかけての政治家・文人。
唐の太宗は謝偃の作る賦(古代中国の韻文の一つ。初唐には賦は科挙の一部にも組み込まれた)を好み、召して賦を読ませた。すると謝偃は<述聖賦>という賦を作り、太宗の治世を祝いだと言われています。
古くは「嘉辰令月」「臨時客」とも題した楽曲。
寛弘五年(1008)の後一条天皇の誕生時の御遊では、父の一条天皇、祖父の藤原道長が参列する中、この「嘉辰」が歌唱され、待ちに待った外孫皇子の誕生に歓びを爆発させた道長は歌いながら涙を流したという様子が『紫式部日記』に残されています。
まさに、この上ない歓び、尽きることのない楽しみを歌う朗詠として慶事には欠かせない楽曲として歌い継がれてきたといえます。
この御代代わりの佳き日。
令和の世がいつまでも平和に、新帝の末永い治世を願ってこの朗詠「嘉辰」を奉奏致します。